中国語ゼロからの本科留学・院進学(1/2)

中国留学へのターニングポイントは人それぞれ。
中国留学経験者へのインタビューを通して、様々な留学体験と帰国後の進路・就職等をご紹介します。

今回は、井上正順さんのインタビューです。

井上さんは不登校の経験があり、日本の大学に行ったこともないまま、中国の大学に留学します。中国に行ったからこそ得られたこと、中国をどのように見つめているか、などに迫ります。


プロフィール

井上 正順(いのうえ まさゆき) 東京都出身。

北京語言大学漢語国際教育専攻学士・修士号取得。
北京留学中は北京語言大学日本人留学生会代表、北京日本人留学生社団顧問、日本希望工程国際交流協会顧問を歴任。
修士課程修了後、中国にてスタートアップを経験。2020年9月に大学時代の学友と日本で会社を設立。
現在は本業の他に、東京都日中友好協会青年委員会委員長として様々な日中交流活動を企画・運営している。

中国語もゼロで大学進学のため留学

ーまず、留学にいくきっかけを教えて下さい。

中国に本科(学部)留学をするのは、中国に住んだことがある人や親族に中国人がいる人などが多いと思いますが、私はそれには当たりません。
保育園の頃から人と同じことをするのが苦手で、あまのじゃくと言われるような正確でした。なぜみんなと同じように勉強をしないといけないのだろう、ということを感じていて、小学校から不登校だったんです。高校までは進学しましたが、学校外のコミュニティに参加していたので、高校に行く必要がないと思っていました。

―そこからなぜ留学に?

留学はかっこいいなという思いがあって、行ってみたいとは思っていました。その当時は留学といえば英語圏というイメージがあったし、英語圏への留学なんてエリートの人がすることだと思っていました。なので、とりあえず大学には行こうと思っていたんですが、高校の単位が足りず、3年で卒業できないことになったんです。

その後、母親が仕事の関係で知った中国留学を勧めてきました。パンフレットを見せられて。何もできない人でも行けるということが書いてあって、思い込んでいた「エリートじゃないと行けない」という部分をクリア。また、人と違うことをしたいという気持ちが強かったので、その部分も魅力的に感じました。自分1人でどこまでできるのかを試したいということもあって、行くことに決めました。

ギャップイヤーの間に、上海の語学学校ではじめて中国語を勉強しました。最初の試験で最下位になってしまったことがきっかけで、そこからしっかりと学ぶようになりました。初めて勉強するものだから、やったらやっただけ伸びるので、だんだん面白くなっていきました。
上海に留学予定だったんですが、しっかりと発音などを身に着けるなら北京の方が良いということで、北京語言大学に留学することに決めました。
北京語言大学の本科(学部)では1,2年生は教養、3,4年生は専門を学ぶという形で、専門は中国語を選び、中国語教育を学んで卒業しました。

―他の日本人との交流はどうだったのか。

留学していた大学は、140か国以上から留学生を受け入れる国際色豊かな大学で、個性的な人が多い印象でした。日本人は真っ当な方でしたね。誕生日にクラブを貸切るような行動力のある人たちが多かったです。日本にいるのとは異なり、枠がないので、いろいろチャレンジできることが多い印象でした。

―中国語はゼロからのスタートだと大変だと思いますが、そのあたりはいかがでしたか?

中国語で中国語を教わるという授業でした。日本人なので、字を見ればわかるんですが、何を話しているのかはわからない。最初のテストもそうで、何を求められているのかがわからないという点が大変でした。
ただ、リスニングなども時間が経てば慣れていきました。日本人だけのクラスでしたが、生活の中で中国語を使う機会もあったので、慣れるのも早かったと思います。最初の3,4か月は予習復習はしっかりやるようにしていました。そこが人生で一番勉強した時だったかなと思います。

―語学を全く勉強しない状態での留学スタートというのは、イメージがしにくいと思いますがどうでしたか?

自分は知らなくて当たり前。外国人だから配慮して、というスタンスでのぞむことができたかなと思います。開き直れたので、わからないことへの抵抗感がすぐになくなりました。それが良かったのだと思います。
面の皮が厚いということが大切ですね。

中国語は発音が最も大切

―中国語を学ぶ上で気を付けておいた方が良いことは?

発音ですね。文法などは間違って覚えていてもあとで直すこともできますが、発音は一度癖がつくと直しにくいので。
きれいな発音を学ぶのであれば、しっかりと一対一で学ぶのが良いと思います。

―中国人と仲良くなるには?

中国人は2パターンで、日本が好きな人とそれ以外の人に分けられます。
日本が好きな場合は、日本のことを自分自身が知っていた方が親しくなりやすいですね。アニメやサブカルチャーへの理解がすごい。日本の経済、政治、文化、わびさびなど、日本のことを知っておく必要があると思います。
それ以外の人たちは、自分を偽らない、自分らしくいれば良いと思います。日本文化のままで接しても良いとは思いますが、中国の習慣を理解して、中国人同士の接し方のように接するとより良いと思う。

―中国人同士の接し方というのは具体的にはどういうことでしょうか?

日本人は外国人が来ると「お客様」だから、おもてなし、少し良いところを紹介しようという感じになるかもしれませんが、そういう丁寧さをなくすという感じです。屋台のお店に食べに行く。ローカルな場所に行くといった感じになると思います。

―中国人が普通にしている生活というのは?

片道チケットで雲南省に行って、屋台でご飯を食べて、お酒を飲んで、明日どこ行くというような旅行を2週間ぐらいしたことがあります。行き当たりばったりでもなんとかなったり、自由な部分というのは日本とは違うところだと思います。
結婚式に招待されて、前日に来るように言われたので、行ったら、結婚式の会場のセッティングを手伝わされたということもありましたね。

―お酒の文化があると思いますが、お酒の強くない人でも大丈夫でしょうか?

中国は18歳からお酒が飲めるんですよね。私の場合は中国語がわからないときからお酒を勧められていたので、それを繰り返して強くなったと思います。
ただ、お茶の文化もあるし、強要されることもあまりないですよ。

―中国人とうまくできない日本人の特徴は?

一番多いのは、自分の価値観が合っていないともうダメってなっちゃう人。海外だとそれをある程度変えないといけないです。中国の価値観を受け入れられない人は、すべて日本と比べてしまう。自分のもともとの環境と比べてしまう人はうまくいかないと思います。あと、めちゃめちゃせっかちな人は合わないですね。中国にはマイペースな人が多いので。
自分の言ったことを曲げないとか、臨機応変さがない人は厳しいと思います。そういう人はなんで中国人はと文句を言って終わってしまいますね。

―ビジネスでの中国はどのようなイメージですか?

自分の手の内は見せない。相手が何ができるかを把握して、お金の交渉をする、というかんじです。
日本はすべて見せてからの信頼ビジネスだが、中国の場合はかけひきをしながらビジネスになっていくというのが多いと思います。

現地に中国のビジネスマンがいるので、日系企業は日系の会社にルート営業をしているんですが、現地で中国人に対してビジネスをしているのは中国人。
日本の会社といっても、売るところなどはローカル化されているので、日本式が100%中国でも実施されているわけではないと思います。


次回は大学院、中国人と働くということなどについてお伺いします。

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