留学の一番の大きな変化は「中国語学習へのモチベーション」

数えきれないほどの貴重な経験をできた前期

前期を終えて今までの留学生活を振り返ってみると、たった半年の出来事なのかと思うほど濃厚で充実した日々で実に様々なことがありました。

初めての中国留学、初めての長期留学、初めてのルームシェア、全てが初めてのことで毎日が目まぐるしく過ぎていきました。初めての体験ばかりで苦しいこともありました。しかしその中で自分自身について見つめなおしたり、新たな考え方に出会ったり、これからの将来について考えたり、少しずつですが自分自身を成長させることができたと思っています。そして10年後20年後振り返った時にこの留学は私にとって大きな転機になったと自信をもって言える経験になりました。

もちろん中国語学習についても大きな変化がありました。一番の大きな変化はモチベーションの変化です。今まではどちらかと言えば学校の専門だから勉強する、将来役に立ちそうだから勉強するという気持ちが強かったように思います。しかし中国に来てからは多くの中国人の知り合いができ、彼らとコミュニケーションを取りたいから中国を学びたい、という気持ちへ変わりました。また私は派遣大学のあった杭州市の雰囲気、自然、人々が大好きになり、このままここで暮らしたいここで働きたいとまで思うようになりました。まだ将来の道は決めることができていませんが、自分にとって新たな選択肢ができたことは大きなことでした。

このようにして前期を終えたころ、今世界を騒がせている新型コロナウイルスが発生し私も日本に帰らざるを得なくなりました。日本に帰る道中、マスクをつけているだけで欧米の人から少し避けられているような印象を受けました。中国の人はこのような差別をもっと受けているのかもしれない、こう思うと苦しくなりやるせない気持ちになりました。

日本に帰ると「武漢からの客は入店お断り」という張り紙などを見ることがあり、ますます胸が痛くなりました。また中国人の友達から「私の知り合いが日本に旅行する予定なのだが、今日本に行ったら日本人に拒絶されないか心配している」といったことを聞かれたときには何と言ったらいいのか分からなくなりました。

今までも日本の中国に対する印象は決して良いものだったとは言い切れません。このことについて、私はこの留学を機に日本にもっと中国を知ってほしい、中国を好きになってほしいと思うことが増えましたが、今回の事を受けてこの気持ちはますます大きくなりました。差別や嫌悪感を増すのではなく、このような時にこそ両国が支え合い、絆を深められるようにしたい、そのような手伝いがしたい。そう思わせられる出来事でした。

後期の学期が延期になり、春休みに予定していた中国旅行や中国の友人たちとの予定も全てなくなってしまいました。とても悔しく悲しくどうしてこのタイミングで、こう思う時も何度もありました。しかし同時に多くのことを考えさせられました。もしかしたらこのような年に留学をしていたのは貴重なことだったのかもしれません。これをきっかけに日中関係についても考え直すことができ、また新たにこのような誤解、差別をなくしたいという新たな目標ができました。そのためにも今は日本でできる限り中国語を勉強していきたいと思います。

写真は杭州のお気に入りの場所です。また戻れることを楽しみにしています。(齋藤有沙 浙江大学 2019年)
 

ABOUT US
Ryohei ISHIZUKA京都府日中友好協会 青年委員会青年委員長
日本の最大手通信キャリアに勤務の後、中国系通信キャリアの日本法人に転職。現在は企業向けのグローバル人材育成を支援する会社でコンサルタントとして勤務。 また、若者のキャリア構築に関心があり、勉強している認知科学を応用したコーチング理論を勉強しており、これまで延べ100名以上のキャリアサポートを行なった実績があります。 内閣府主催「日本・中国青年親善交流」事業における2020~2023年研修講師を担当。2024年には日本・中国青年親善交流事業に参加。