中国で生活をし始めて感じたことは、中国の販売員はものすごく商売熱心で、私たちが何気なくお店に入ってふらふらと商品を眺めているものなら、販売員はすぐさま積極的に話しかけ、あらゆる商品を提案してくれる。断る事が苦手な日本人にとっては、販売員が提案した物がそこまで必要なものでなくても、ついつい店員の熱意に負けて買ってしまうだろうと感じる場面に遭遇した。
それは、化粧品を買うために化粧品店に行った時の出来事である。元々欲しかった物を見つけた後に販売員にリップを勧められた。その時の私はいくつか気になるリップをみつけたが、ものすごく欲しい訳でも欲しくない訳でもなかった。販売員が「このリップを購入すると別のリップが一つサービスです。」と言われたが、私はそのサービスのリップに魅力を感じなかった。すると、「2つ商品を買うと、フェイスパックも付きます。」と言われたが、それらのキャンペーンにも魅力を感じなかった。すると次は「これもキャンペーン対象で2商品買うとサービスできます。」と言いながら、保湿ミストを持ってきた。ちょうど冬になりかけだった事もあり、敏感乾燥肌の私はその商品がとても気になった。これがサービスなら、元々欲しかったものとリップの2つを買う価値があると考え、2商品買う事に決めた。しかし会計時に、保湿ミストがキャンペーン対象外という事が分かったので、私がリップの購入をやめることを伝えると、数名の販売員があの手この手と私を説得し、「リップ購入で別のリップもサービスできてお手ごろ価格なのに、なぜ納得できないのか」などとあまりにもしつこかったので、ハッキリと「販売員の方が保湿ミストがキャンペーンになると言ったからそれを試したくて、買おうと思った。もし、対象外ならリップも今すぐ欲しいわけではないから買わない。」と伝えると、最終的にキャンペーン対象外だったはずの保湿ミストをプレゼントするのでリップを買うように言われた。そこまでしてリップを買わせる理由は、私には分からないが、最終的にはその2つの商品を購入し、2つのプレゼントをもらう事ができた。
この経験を通じて、日本だと、私の態度はやや失礼に見えるかもしれないが、やはりハッキリと自分を意思を伝える重要性をこの時に実感した。また、日本では何に対してもマニュアルがあるが、中国ではマニュアルがあったとしても、最終的な判断はその個人に託されていると、この生活を通して感じる機会が多い。交渉や、自分の意見を伝える事、人と人との関係性によって最終的な結果が変わってくる。今思うと、もし私は留学してすぐにこの経験をしていたら、きっと販売員に言いくるめられて必要のないフェイスパックをもらったり、保湿ミストをもらえることもなかっただろう。このような経験は日本では絶対に起きないことなので、意思を伝えれるようになった自身の成長や、中国の生活に馴染めていることを実感したり、保湿ミストを手に入れて少し嬉しくなったり、様々な感情が溢れた素敵な経験となった。(天堀寛子 華東師範大学2019年)