私が留学している西安は中国西部の中心都市です。
かつて始皇帝が統治した秦の都であったり、遣隋使や遣唐使として多くの日本人が学びに訪れた場所なので、日本人にも知名度が高い街だと思います。一方で西安に住んでいる日本人は少なく、街中で日本人を見かけることはほぼありません。
今回は、日本人は少ない、だけど日本人に所縁ある西安をご紹介します。私が好きな場所や名物の食べ物を皆さんにお伝えします。
私が好きな西安のスポット6選
- 青龍寺
青龍寺は空海が修行した寺として有名です。皆さんご存知だとは思いますが、空海は平安時代のお坊さんです。唐代の西安に留学して青龍寺で仏教を学んだあと、日本へ戻り和歌山県の高野山で真言宗を開祖しました。
青龍寺は西安交通大学から徒歩20分ほどの距離にあるので、私は最初この寺の存在を知ら
ずに大学の近くにある観光スポットだからという理由で軽率に訪れました。中に立ち入ると不思議と懐かしい気分になりました。境内の雰囲気が日本の寺社仏閣にそっくりだったのです。それもそのはず、なんと青龍寺の本堂の建設には日本の高野山が携わっていました。青龍寺は長らく本堂が消失しており、遺跡跡となっていました。そこに空海にゆかりのある高野山の人々が、ここにお堂を再建したいと申し出をして、いまの青龍寺が建てられました。日本人が再建に携わったので、日本の雰囲気が感じられる場所となっていたのです。
境内には日本人の名前が記された石碑があちこちにあり、日本人がそこにいた面影を感じることができました。ホームシックになったときはここにきて故郷の空気を感じていました。
- 興慶宮公園
ここは西安交通大学の北側すぐそばにある大きな公園です。敷地内は広くて、池、花園、
遊具、カフェ、中国式建築物があり、さらに公衆トイレがキレイなので気に入っています。平日はご老人たちが元気よく運動をしており、休日は観光客や家族連れで賑わう憩いの場となっております。
- この公園の南側にはなんと阿倍仲麻呂記念碑が建立されています。
阿倍仲麻呂はみなさんご存知だとは思いますが、奈良時代に西安に渡った留学生です。日本人でありながら唐の最難関国家公務員試験である科挙に合格した大天才です。そして日本には戻らずに亡くなるまで西安で過ごしました。この記念碑のそばに行くと、千年以上前の日本人留学生も西安で学問に励んでいたので、私も頑張ろうというポジティブな気持ちになれます。私と阿倍仲麻呂や空海を同列に並べるのはおごがましいですが、日本人が西安に留学することは特別な意味があるのかなと感じられる場所です。
- 西安城墙
西安中心部には街をぐるっと囲むように全長13kmの城壁があります。この城壁はなんと明代に建造されたものが現存しています。さらにこの城壁の上を歩くこともできます。もし壁に登るときは必ずしも1周する必要はなく、出入り口が複数箇所あるので1/4周だけ歩くということもできます。自転車の貸し出しもあるのでサイクリングも楽しめます。
また城壁の上に登ると、壁の内側と外側で街並みが全く違うことに気がつきます。内側は
建物の高さ規制があるので伝統的な建築物が多いですが、外側は高層ビル群が立ち並んでいます。西安は政府主導で中国北西部のハイテク産業都市として開発している真っ最中なので、市内郊外にどんどん高層ビルが建てられており都心が急拡大しています。西安は歴史都市と工業都市が両立している面白いまちであると改めて認識できます。 - 大唐不夜城
大雁塔のすぐそばにある大きなストリートです。“不夜城”の名の通りここは夜通しで盛り
上がる場所となっています。とにかく人が多く週末は若者や観光客でいっぱいになります。ライトアップが綺麗なので夜に行くことをオススメします。 - 回民街
回族(イスラム教)の人々の街です。西安はシルクロードの重要拠点として古くから西域と交流があり、イスラム教徒も数多く住んでいます。回民街はそんな西域の雰囲気が味わえる通りとなっています。
- 兵馬俑
ここは西安に来たら必ず行くべき場所です。兵馬俑は郊外にあり、西安市内から地下鉄とバスを乗り継ぎ約2時間ほどかかりますが、労力に見合った感動を得られます。施設内に入るとおびただしい数の兵馬俑が整然と並んでいる、歴史の教科書で見たそのままの景色が目の前に広がります。私は中国の歴史を好きになるきっかけが兵馬俑だったので、初めてこの目で見た時は涙が出るほど感銘を受けました。他にも貴重な発掘作業中の現場も見学できるので、歴史好きにはた まりません。
(若林真央, 西安交通大学, 2024年)