中国の今を語る上で欠かせないのは、IoTの発展だろう。なかでもモバイル決済・ネットショッピング・フードデリバリーの3つはすべてスマホひとつで完結し、現在の中国では非常にありふれたものとなっている。この3分野は日本でも成長が著しいが、話を聞く限り、中国は日本の一歩先を行っているといった印象だ。
中国のキャッシュレス化が高度に発達していることは有名だが、中国人の友達が通う大学内には、顔認証で決済が可能な自動販売機まで設置されているという。また、先生方も友達も基本的に財布は持ち歩かないらしい。僕たちより下の世代の中国人は財布に触れる機会がないまま大人になるのだろうか。中国で財布という言葉が死語になる日もそう遠くはないのではないかと感じている。
また、ネットショッピングは近年、急速に普及し、中国人にとって不可欠なものとなった。このようなネット上での買い物が広く普及したことを象徴する、現代中国語のスラングとして“吃土”という言葉を友達が教えてくれた。直訳すると「土を食べる」となるが、これはネットでの買い物に熱中しすぎた結果、お金がなくなり、土を食べるしかなくなったといった意味で皮肉的、自虐的に使われる一種の冗談なのだという。
吃土のレベルが上がると、漢字に含まれる“土”の数が増えるらしい。
また、フードデリバリーは学生でも利用している人が多いらしく、美味しそうな写真をよく送って見せてくれる。「授業中 携帯が鳴り 出前着き」。日本語専攻の中国人の友達が書いた川柳をみせてくれたことがあった。この句はユーモアに溢れていると同時に、出前文化が広く定着した現在の中国社会を実によく描写しているのではないだろうか。
中国人と積極的に交流をし始めたのは、オンライン授業が始まった2ヶ月ほど前からだが、思えば中国語だけではなく、中国についての知識も段々と増えてきた。そして、中国について知れば知るほど、ますます関心も高まるばかりだ。
北京二外では、あと一週間ほどで期末試験を迎え、その後長い冬休みに入る。これまで毎日のように受けていた授業が約2ヶ月間なくなるというのは、気楽なような寂しいような気持ちだが、この長い休み期間はオンライン留学の鬼門となりそうだ。今から、自分が勉強をサボってしまわないか不安になっている。中国に行けない以上、自分から積極的に中国語に触れる機会を作らねばならない。
しかし、なにはともあれ、まずは目前に迫った試験の準備をしっかりと行い、良い成績をとって気持よく休みに入れるように頑張りたい。(染谷圭秀 北京第二外国語学院 2020年)