一年前の今頃、会社を辞めて、荷物をまとめ、北京行きのフライトを買い、携帯のSIMロック解除をしたり、役所へ行って住民票を抜いたり、しばらく会えなくなる家族や友達と時間を大事に過ごし、目が回るような忙しさの中で、これから始まる中国での新生活への期待で胸を膨らませていたことを思い出します。
留学を始めるにあたって、たくさん考えなければいけないことがありました。仕事を辞めて、冬のボーナスを諦めて、職歴に一度ピリオドを打たなければいけない。快適な一人暮らしのアパートを引き払って、数年前に買いそろえたばかりの家具を全部処分しなければいけない。一年間中国語を学んだあと、どんな未来が待っているかわからない。周囲の友達が転職したり、結婚したり、家を買ったりと人生のステップを重ねていく中、一人で外国に飛び出すことに不安が無かったといえば嘘になります。
けれども、出国後一年が経った今、留学を決めたことに少しも悔いはありません。特に後半、新型コロナウイルスの影響で、当初予定していた留学計画が180度狂ってしまったにもかかわらず、です。慣れ親しんだ日本での生活を捨てて、見知らぬ場所で再スタートを切ることは容易くはありませんが、大きな学びがあります。
新しい環境に順応することや、異なる文化を受け入れることを学び、たくさんの新しい友人に出会い、留学は世界を広げるというのは本当なんだなということを実感しました。私は今回の留学が初の中国渡航だったため、とにかく見るもの全てが新鮮でした。
全ての決済がスマホ一つで済ませられること、ネットで買ったものが翌日には届くこと、町中にあふれるシェアサイクルなどなど、日本にもあったらいいのにと感じることが多々ある一方で、水回りの衛生状況、基本的に提供されるご飯の量が多いため、大量の残飯が廃棄される光景など、ショックを受ける部分もありました。ウイルスの影響で今後しばらくはオンライン授業も増えて、留学の意味が変わっていくのではないかと感じていますが、どうかこれからも少しでも多くの人がこのような経験をする機会を持てれば良いと思います。(松尾美欧 清華大学 2019年)