留学中に出会う中国人には主に3パターンがあると思う。
一つ目は公共の場所でお仕事をしている人たち。私が北京に来て初めて会話を交わした中国人は、空港で指紋採取マシンの横に立っていた職員で、指紋の読み取りがうまく行かず、「请问…」と声はかけたはいいものの、どう説明していいか分からずおろおろしていると、慣れた様子で直接入国審査に行くようにと言われた。最初は中国語で言われたのですが聞き取れず、すぐに英語で言い直してくれたのがありがたかった半面、まるで中国語のできない自分に情けなさを感じたことを今でも覚えている。
それからの中国生活では、学校の入学手続き、タクシーの運転手、携帯ショップ、銀行口座の開設、レストランでの注文など、毎日どんな場面でも否応なく、その場その場で出会う人と中国語で会話をしなければいけない環境だ。これこそが留学の醍醐味でもあるが、最初は携帯の翻訳機に頼りきりで”交流”と呼べるものではなかった。以前に比べて店や外で見知らぬ中国人との会話がスムーズにいくと、成長を感じて嬉しくなる。
二つ目は生活範囲内にいるいわゆる顔見知りの中国人だ。学校の先生や、寮のスタッフ、サークルの中国人学生など、日常的に交流する相手である。やはり、知らない人に比べて圧倒的に話しやすく、相手も外国人ということで気を遣ってくれるのでややリラックスして中国語を使うことができる。特に寮のスタッフは、勉強室に深夜までいると、ちょくちょく見回りにきては「まだテストは終わらないの?無理をせずそろそろ寝たほうがいいよ」などと声をかけてくれたり、部屋で設備トラブルがあった時も快く対応してくれて、もっと中国語を勉強して帰国時にちゃんとお礼を言えるようにしなければと、勝手にモチベーションにしている。
三つ目は中国の友人だ。交流会、友達の紹介、インターネットなど出会いの場は様々だが、私が日本人である以上、日本や日本語に関心のある人たちと出会う機会が多い。共通して気を付けていることは、自分の意見をはっきりということ、中国語の間違いを恐れないこと、wechatはできるだけ早く返すこと…などである。一期一会の出会いも、この先長い付き合いになりそうな友人もそれぞれ大事にして、より実りのある留学生活を送りたい。(松尾美欧 清華大学 2019年)