ある日の作文の授業のこと、とある留学生の発言が妙に印象に残っている。たしかマレーシア人だったような気がするのだが、彼はこう言った「中国の街中では小学生くらいの子供を全然みかけない」と。もちろん、これはホラー映画みたいなことを言っているのではない。また、一人っ子政策で子供が激減したとかいう話でもない。子供はいるにはいるのである。僕なりに先の留学生の発言を言い換えるなら、「中国では街中で遊んでいる子供が極端に少ない」みたいなことだと思う。
要は、中国の子供は塾や習い事に忙しすぎて、外で遊ぶ暇がないのである。だから、公園やグラウンドでも、よく見かけるのは子供の代わりに、お年寄りの方ばかりなのである。(中国のお年を召された方は大変元気である!)そんな中でもたまに見かけるとすれば、それは子供の登下校風景である。とはいえ、登下校風景も日本とは少し違っている。中国では小中学生程度の子供であれば、親が毎日学校まで出迎え、子供と一緒に登下校するのが普通である。日本人からするとやや過保護に思えるが、中国人にすれば当たり前のようである。こうしたことは、僕が南京という都市部に住んでいるから感じるのであって、地方都市や農村部では状況が異なってくるのかもしれない。また、ゲームやインターネットの発達した現代、日本人の子供も以前よりは外で遊ぶことが少なくなっている。これは全世界的な趨勢だとも思う。ただそれにしても、中国人の子供は外で遊んでいない。少なくとも日本人の僕には本当にそう感じられる。
こうした背景には、中国の競争社会・学歴社会があると思う。なにせ人口13億人の国だからとにかく人が多いし、それに応じて競争も苛烈である。また、周りの大人が皆口をそろえて、子供の勉強やら成績や学歴やらを話題にしていれば、自分の子供だけ呑気に遊ばせる、というのも、それなりに心が強い親でないとなかなかできないだろう。僕は実際に中国の競争を体験したわけでもなんでもないが、中国の子供を見ていると、中国社会のプレッシャーをひしひしと感じるのである。(個人的には、子供には外でのびのびと遊んでほしいのですが…)
追記:12月13日は南京大虐殺の公式追悼日(公祭日)でした。中国と日本にとって忘れてはならない大事な歴史だと思います。最後の写真は南京大虐殺遭難同胞記念館のモニュメントです。改めて追悼の意を表したいと思います。(佐野聡 南京大学 2019年)