中国留学へのターニングポイントは人それぞれ。
中国留学経験者へのインタビューを通して、様々な留学体験と帰国後の進路・就職等をご紹介します。
今回は、I・Yさんのインタビューです。
Iさんは中国人が通う学部でただ1人の日本人として学び、4年間で卒業を果たし、中国系企業でも勤務しました。なぜ中国人と同じ学部で学ぼうと思ったのか?ネイティブの中でどうやって授業についていったのか?などに迫ります。
本記事は「日本人1人で中国人本科に留学!中国系企業に勤務するまで(1/2)」からの続きです。
プロフィール
高校卒業後、中国に留学。
2年間の語学留学の後、本科生として4年間を厦門(アモイ)大学で過ごす。
中国系企業等を経て、現在は日中青年の国際交流事業を運営する団体に勤務している。
不安な気持ちを行動に変えて、いろいろなことに挑戦した
―厦門大学で4年間生活してみてどうでしたか?
大学4年になって、ようやく不自由なく会話できるようになったかなという実感はありました。3年生まではまだまだ不自由に感じるところがあったので。中国の現地人と溶け込むことを意識しました。まずはクラスメイトで関わる人を増やそうと、街中で会ったら挨拶をするようにしていました。そうすることで、何かあったときに助けてもらえるとも思っていました。自分から話さないと、相手は外国人を見たことがない人がほとんどなので、日本人というだけで敬遠されるという感覚もありましたから。
学区内にいるおじちゃん、おばちゃん、寮の門番をしている人などともコミュニケーションをとって顔を覚えてもらうようにしました。そういった交流を通して、大人の中国人は何を話題にするのかなどをつかみとっていたんです。年上の人たちには日本の漢字を見せると喜んでもらえましたし、日本のお菓子なども喜んでもらえましたね。
一方、日本との関係を遮断するのではなく、別のキャンパスにいる日本人留学生とも連絡を取るようにしました。仲間意識も芽生えて、楽しく過ごせました。
その頃ちょうど東日本大震災が発生し、インターネット上で支援活動をしている人もいて、私も何かお手伝いができないかと思って積極的にコミュニティに入ろうとしました。
―かなり積極的に行動されていますが、なかなか20歳前後でできることではないですよね。そのような積極性はどこから出てきたんでしょうか?
いえいえ、ただただ必死だっただけなんです。何か前向きな気持ちを持つというか、努力をし続けていないと、メンタルが持たなかった。不安な気持ちをを行動に変えて、「自分はここまでやったんだ」という実績を残さないと不安に押しつぶされてしまいそうで、それでとにかく動いていたというのが大きいと思います。
―やはりメンタルを保つのは大変だったんですね。日本への一時帰国はしていましたか?
夏休みや冬休みには帰っていましたね。でも、本当にずっと中国語しか使っていなかったので、日本語能力が落ちたと感じるようになりました。一時帰国した際に高校時代の友人と話をしても、日本語で自分の気持ちをうまく伝えられなくなっていたんです。これには驚いて、このままでは日本語も中国語もどっちつかずになるかもしれないと不安に感じたこともありました。
―卒業が近くなる頃には、進路のことはどのように考えていましたか?
とにかくまずは卒業することが一番の目標でした。卒論も中国語で書きました。日本の大学と違い、ゼミもなかったです。卒業することに必死になって、卒業後の進路について考える余裕はありませんでした。それに、当時は中国人と同じ本科を卒業して就職する日本人というのはレアケースで、参考になる人もおらず、情報がぜんぜんありませんでした。
日系企業の就職説明会が北京で行われていたので、それは在学中に参加しました。そこで服飾関係の会社で内定をもらえたので、卒業後の進路の確保はできていました。中国では、社会人経験がないと就労ビザが下りないので、まずは日本での就職を考えたということです。そのあとで、中国でも働きたいと考えていました。
服飾の会社にしたのは、厦門のアルバイト先のオーナーの影響です。ものに込められた思いを伝えるというのが素敵だなと思っていたので。
―なぜその会社に決めたんですか?
決め手は、日本で数年経験を積んだ後に、中国でお店を開くというのをビジョンとして掲げていたところでした。
新卒入社で、同期がいて、一緒に研修を受けてという感じでした。社員は15人くらいいましたが、1年半いた中で、上の先輩は全員辞めてしまい、下も1人しか残らなかったんです。それに、仕事で中国語を使うこともとても少なかった。それで、転職を考えるようになりました。
―転職活動はどのように?
エージェントを通して転職活動をしました。エントリーシートなどは、そのときに初めて書きました。
それで、中国系のウェブ広告の会社に応募しました。中国語を使って仕事ができるということだったので。
面接官は中国人、面接は中国語でした。面接には通ったので、中国語を話すこと自体は問題ないと判断されたのだと思います。
でも、いざビジネスで中国語を使うとなると、例えばメールの書き方など、日本と中国では異なることがたくさんありました。中国語のメールは結構堅くて、それも論文を書くのとは違う堅さなんです。高い役職の相手へのメールは同じレベルの役職の人から送らないといけないなどの慣習があり、まず自分で中国語の文章を作って、それを上司に送ってもらうなど、中国独自の会社文化に慣れるのに時間がかかりました。
―中国系企業で働いて、何か変わったと思うことはありましたか?
同僚との関係がフランクでしたね。
日本の企業の時は体育会系の雰囲気があり、上の人の言うことが優先で、下の人間が率先して動くなどの暗黙のルールがありました。店舗勤務のときは水を飲むことひとつとっても、管理が厳しかったんです。
それが転職後は、おやつが職場に置いてあって、食べながら仕事をしたりと、雰囲気が変わりました。季節によって本社から月餅などいろいろ送られてくるので、楽しみにしていました。部署単位で出かけるなど、チームビルディングをするための取り組みもいろいろやってくれて、楽しかったです。
―中国本社と日本支社の関係は?
日本の会社としては一定の利益はあげていたんですが、中国の売り上げに比べると日本での売り上げは小さく見られがちなので、中国の市場規模がいかに大きいか、中国の経済成長を日々肌で感じました。クオーターに1回は本社の人が来るので、積極的に声をかけてつながりを大事にしていました。
―本社に行く可能性もあったんですか?
私が入社する以前に、中国人で日本支社から中国本社に行った人が1人いたという話はきいたことがあるんですが、詳細はわからないです。
日本支社のトップは中国本社から派遣された人でした。どこの会社でも本社(本国)の人をトップに置くというのはよくある話ですよね。
中国だと、同じ会社でずっと働くのではなく、2~3年で転職するのがセオリーなので、日本のウェブ系の会社に転職する人も多かったです。
日本人の上司は、もともと中国語は話せなかったのに、10年間でビジネスで中国語を使えるレベルにまでなったり、中国本社の人たちとの関係性をうまく築いたりということができていた人だったので、長年いたんだと思います。
中国との関わりを通じて、若い人に国際的な感覚を伝えたい
―その後、Iさんも再度転職活動をされたんですよね。そのきっかけは?
ウェブ広告では、広告に人の思いなんかを乗せるのが難しいかと思ったんです。あくまでビジネスなので、人の思いだけだと回っていかない。現実的にお金がそこで発生して、どう消費者に買わせるかということが大切じゃないですか。ただ、それを重視しすぎると、その先の体験はおそろかになってしまう。いろいろな企業と関わる中で、自分が求めている、広告を受け取った側の体験を重視する、ということを実際にやるのは難しいと感じました。
上司が日本人で、管理職になるまで10年ぐらいかけていろいろ経験していた人だったので、理解はありました。残業はえげつないぐらいあったんですが、楽しんでやれていたと思います。
―いまの勤務先では、どのような仕事を?
中国との関わりを通して、国際的な感覚を少しでも若い人たちに養ってほしいという気持ちがずっとあったんです。それで、日本と海外の青年どうしの交流プログラムなどを運営する、今の仕事を選びました。日中青年交流を担当しています。
―いまの勤務先は日系の団体ですが、中国企業と比べていかがですか?
日系といっても、国際交流プログラムを運営するような団体なので、他の職員も海外経験者が多く、外国語を話せる人しかいない、グローバルな職場です。なので、枠にとらわれず、柔軟に物事を考える人が多いので、窮屈さを感じることはないですね。
―ありがとうございました。最後に、今後中国に関わりたいと思っている人へのメッセージをお願いします。
中国という国は、1回行けばはまる人ははまるのではないかと思います。どうやったらその1回を作れるのか、というのが課題ですね。
中国だけに限ったことではありませんが、自分の中で作り上げてきた常識にとらわれないという意識を持つことが大切だと思います。
これまでのメディアの情報や周囲の意見で、中国に対するイメージは自然とできているでしょう。でも、自分がその目で体験してみたいと思ったら、周りに左右されずに行ってみてください。そうすることで、物事に柔軟に対応できるようになったり、考え方が広がったりということにつながるので、行動することが新しい世界に行ける近道だと私は思っています。どの道を通るにしても、自分で選んだ道を進むことがベストだと思います!
你会では、中国留学を希望するみなさんに、中国語講座・マナー講座、留学前研修、留学サポートなどを行っています。