1.はじめに
西安交通大学は中国の大学トップ10に入るほどの名門大学で、中国全体から優秀な学生が
集まります。そして西安は一帯一路構想の要所でもあるので、東南アジア、インド、中央アジア、アラブ諸国、アフリカ、ロシアなど一帯一路の参加国から数多くの留学生も来ています。
反して日本人留学生は非常に少なく、2024年現在は5人前後ほどしか在籍していません。
よってインターネット上で西安交通大学についての情報が少なく、その情報も古かったり散逸しています。
そこで今回は将来の留学生が参考になるような「日本人留学生のための西安交通大学ガイドブックver2024」をここに記そうと思います。キャンパス別に施設や食堂、留学生寮の様子や留学生のサポート体制を解説していきます。西安交通大学に留学予定の学生さんも、まだどこの大学に留学するか迷っている学生さんも参考になるように、大学の良いところばかりではなく、マイナスな部分も正直にお伝えします。
目次
1.はじめに
2.興慶キャンパス紹介
①キャンパス概要
②食堂
③留学生寮
⑴西13寮
⑵西8寮
⑶西7寮
⑷補足
④その他
3.曲江キャンパス紹介
4.雁塔キャンパス紹介
5.創新港キャンパス紹介
①キャンパス概要
②食堂
③留学生寮
6.留学生のサポート体制について
7.さいごに
2. 興慶キャンパス紹介
①キャンパス概要
西安交通大学の4つあるキャンパスのメインです。ほとんどの留学生がこちらのキャンパスに在籍しています。キャンパスはほかに曲江キャンパス、雁塔キャンパス、創新港キャンパスがあります。(後述いたします)
興慶キャンパスは西安市内の中心部に位置しており、周辺に地下鉄駅が3つあるので交通アクセスも良いです。すぐに钟楼や小寨などの繁華街に行くことができます。キャンパス内は広
く自然豊かで車が通行できる道路があり、図書館、病院、家電店、銀行、美容室、博物館まであり、まるでひとつの街のようです。年季がある建物が多いですが、ところどころに最近建てられたであろう棟も存在します。
日本人にとって辛いポイントは、キャンパス内トイレがほぼ和式であることです。かつ清掃が行き届いていないので匂いや便器の汚れが酷く、洗面台にソープも置いていません。留学生寮(西13棟)のトイレは寮母さんがこまめに清掃してくれて比較的綺麗だったので、日々のトイレはそこを利用していました。
②食堂
食堂は東西にふたつあります。どちらも3階建てで非常に大きいです。建物内にはスーパーやカフェ、ミルクティー店やコーヒー店など他の飲食施設も併設されています。食堂のご飯に飽きた留学生は外の飲食店に行ったり出前を取ったり自炊をしていますが、私は「メニューが豊
富・うまい・安い」の三拍子が揃った大学食堂を気に入っているので、ほぼ毎日利用しています。
食堂の魅力を伝えるために私のオススメのメニューを紹介します。西側の食堂1階で食べ
られる酸辣粉です。
酢の酸味が効いたスープに食欲が掻き立てられ、もちもちとした麺とシャキシャキしたもやしのハーモニーがたまらなく美味しいです。さらになんと5元(約100円)で食べることができます。美味しくてお腹にも溜まるのでお金に余裕がなかった留学初期はこればかり食べていました。
しかしこんな食生活を続けているとしばらくしたら体調を崩してしまったので、栄養バランスの良い食事を心がけるようになりました。そこでオードブル形式のお惣菜を量り売りで購入できるお店に通うようになりました。ここなら彩豊かな野菜やお肉をバランス良く摂取できます。
③留学生寮
留学生寮は3つあるので、ひとつずつ紹介していきます。
⑴西13寮
・立地
大学の南西側に位置する寮です。向かいに食堂があるので大変便利です。またこの寮には教室も併設されているため、寝坊しても部屋から徒歩30秒で教室へ行けます。
・寮システム
2人1部屋が原則ですが、追加でお金を支払えば1人部屋にもできます。光熱費は無料なので夏でも冷房代を気にせずに部屋を涼しくできます。(たまに停電しますが)
・清潔度
部屋はある程度清潔です。寮母さんがゴミ回収や部屋の清掃を定期的に行ってくれます。木々に囲まれているおり部屋に虫がよく出没するので、虫が苦手な方は対策が必要です。
・設備
共用スペースに洗濯機と冷蔵庫が備え付けられています。ここで電気調理器を使っ
ての自炊も可能です。
・注意点
お湯が夜7時から11時までしか出ないのでシャワーを浴びられる時間が制限されて
います。
また全ての留学生寮に共通することですが、男子寮・女子寮の区別がありません。
ルームメイトが異性になることはないですが、隣の部屋に異性が住んでいることがあるので留意しておきましょう。
⑵西8寮
・立地
南門のすぐそばに位置しています。
・寮システム
原則2人部屋です。寮費が無料になる国費留学生は基本的にこちらに住むことにな
ります。※国費留学生でも追加でお金を払えば1人部屋にできる学校もあるらしい
ですが、西安交通大学ではそのような措置はありません。
・清潔度
留学生寮の中では最も古い寮です。潔癖症の人は水回り部分に不安を覚えるかもし
れません。こちらの寮も木々に囲まれており部屋に虫がよく出没するので、虫が苦
手な方は対策が必要です。
・設備
共用のキッチンスペースと洗濯機があります。
・注意点
お湯が夜7時から11時までしか出ないのでシャワーを浴びられる時間が制限されて
います。7階建てでエレベーターがないので、上階層に住むと階段の昇り降りが大
変になります。
⑶西7寮
・立地
南門のすぐそばに位置しており、西8寮と建物が繋がっています。
・寮システム
主に私費留学生が多く住んでいる寮です。こちらには1人部屋がありますが、その
分値段も高いです。
・清潔度
部屋の値段が高い分綺麗です。トイレとシャワールームと洗面台のスペースが離れ
ているので清潔です。
・設備
共用のキッチンスペースと洗濯機があります。この寮はなんと24時間シャワーから
お湯が出ます。
⑷補足
留学を開始する2〜3週間前にWEB上で留学生寮の予約ができるようになりますが、私の場合そのWEBサイトにそもそも繋がりませんでした。西安交通大学の留学生事務室に問い合わせても返信が一切来なかったので、住む場所を確保できないまま留学先に行くことになりました。
留学生の中には大学周辺で部屋を借りて住んでいる学生も多く、私もそのひとりで
す。留学開始時に留学生寮の部屋が満室だった場合、外に部屋を借りて住むように指示さ
れます。この場合国費留学生は月700元の住宅補助が支給されますが、大学周辺のワンル
ーム相場は1500〜2000元(約3万円〜4万円)なので家賃のすべてをカバーできません。
ルームシェアをする場合は700元ほどで部屋を借りられるようです。
また保証人なしで家具付き部屋を即日借りられることは中国の賃貸事情の大きな利点ですが、その代わり半年分の家賃を一括で支払う場合が多いです。よって日本からまとまったお金を持ってくる必要があります。加えて光熱費、マンション管理費、冬の暖房費なども自分で支払う必要があります。学生寮よりも快適な環境で過ごせますが、その分出費も大きくなります。
④その他
こちらのキャンパスには日本語学科があります。週に1回、日本語学科の学生と日本人留学生が交流できる「日本語コーナー」というイベントが開催されます。ここで中国人の学生や日本人の先生と繋がることができます。
3.曲江キャンパス紹介
こちらのキャンパスは興慶キャンパスの近くにあります。しかし一部の学科と研究機関が設置してあるのみで、中国人本科生もこのキャンパスの存在を知らないほど知名度が低いです。おそらく留学生はこちらには訪れる機会はないと思うので、このキャンパスの説明は割愛させていただきます。
4.雁塔キャンパス紹介
こちらは医学部の学生が通うキャンパスですが、ここにも一応留学生寮があります。興慶キャンパスの寮が満室になっていたときは、一部の留学生はこのキャンパスの留学生寮に住んでいたそうです。興慶キャンパスへ行くにはバスで40分ほどかかるので、当時そこに住んでいた留学生は朝の通学に苦労していました。
5.創新港キャンパス紹介
①キャンパス概要
創新港キャンパスは主に大学院生が利用するキャンパスです。ここは中国西部における科学技術研究機関の重要拠点として政府も力を入れており、2020年4月には習近平国家主席も視察に訪れるほど注目されています。
そしてなんといっても2019年に完成したキャンパスなので、建物が非常に綺麗です。トイレには外国人留学生を考慮して洋式トイレも設置されています。清掃も行き届いており非常に快適です。
他にも図書館や博物館、プールなどの施設もあります。ただし郊外に造られたキャンパスなので、西安中心街に行くのに電車で片道1時間かかります。周辺はショッピングモールがひとつだけあるのを除いて緑に囲まれています。よって西安の街をぶらぶらしたり買い物することは気軽にできず、大学内で日々の生活を完結させることになります。
創新港キャンパスの学生は街の中心にある興慶キャンパスを羨ましく思い、興慶キャンパスの学生は綺麗な創新港キャンパスの学生を羨ましがり、お互いないものねだりをしていま
す。
②食堂
食堂は5つあります。どれも興慶キャンパスほどの大きさはありませんが、キャンパスのいたるところに食堂があり便利です。
大学内にはスーパーやミルクティー店やコーヒー店など他の飲食施設も併設されています。郊外にあるので周辺の飲食店が少なくて出前や外食の選択肢は少なそうです。
③留学生寮
・立地
キャンパスの北側に留学生寮があります。すぐそばに食堂があるので大変便利です。地下鉄駅からは徒歩15分ほど離れている点だけが不便点です。
・寮システム
いわゆるユニット制の部屋です。1ユニット5人の構成で、5つの個室と共用で使うリビングとトイレ・シャワールームがあります。5人で同じ空間に居住をしますが、個室があることによりプライベートも確保できます。
・清潔度
最近建設されただけあって西安交通大学の留学生寮の中で群を抜いて綺麗です。水回りもトイレとシャワールームが分かれたいわゆる「干湿分离」タイプで清潔感があります。
ただし共用部分のリビングとトイレ・シャワールームは入居者自身で清掃をする必要があるので、清潔さを保つためにはルームメイト間で衛生面の共通意識を持つことが大切になります。
・設備
興慶キャンパスの留学生寮とは違いエレベーター完備で移動にも困りません。寮の地下スペースには洗濯機と乾燥機やアイロン、簡易な談話スペースが設置されています。
共用キッチンがないので自炊は各部屋のリビングでおこなう必要があります。リビングには窓がないので料理の匂いがかなりこもってしまうらしいです。
また共用部分の電球が切れていたり、新築にも関わらず水漏れが発生している部分があったりとメンテナンスがあまり行き届いていない印象がありました。(中国の建物は全般的に共用部分のメンテナンスをするという意識が薄いように感じます。)
6.留学生のサポート体制について
留学先を選ぶ上でサポートが充実しているかどうかは大切な要素ですが、西安交通大学はサポート体制が万全とは言えません。留学生事務室はかなりいい加減です。
私の場合は寮の部屋が優先的に確保されるはずの国費留学生であるにもかかわらず、寮の部屋が確保されていなかったり、居留許可申請時(半年以上中国に滞在予定の外国人留学生が必ず行わなければいけない手続きです。
これを入国後30日以内にしないと不法滞在とみなされ罰金刑となるので絶対に申請する必要があります)に、担当事務員の指示が二転三転したため申請期限ギリギリになっても手続きが完了していない事態に陥ったりしました。ほかにも奨学金の振り込みが遅延したトラブルが発生したときに遅延の理由や振込日を聞いても、そもそも返信がなかったり、その場しのぎの回答しかされず、留学生に対して誠意ある対応をしているようには思えませんでした。
留学生事務室のサポートがこのような状態であるので、精神的にも身体的にも体調を崩してしまい途中で帰国してしまう留学生が一定数いました。
また事務室の対応は全体的に明確な規則やマニュアルがなく行き当たりばったりで動いている感じが否めませんでした。例えば先述した通り国費留学生の私には寮の部屋が用意されていなかったにも関わらず、私より後から来た交換留学生は寮に入れていました。
どうやら交換留学生の派遣元の大学が部屋が用意されていないことに強く抗議をすると、留学生事務室側が早急に部屋を確保してくれたみたいです。なにか要望があるときは個人で頼んでも留学生事務室はほとんど相手をしてくれません。
交換留学生の場合は派遣元の大学経由で要望を伝えてると動いてくれます。このように、良く言えば「臨機応変に対応してくれる」、悪く言えば「言ったもの勝ち」な部分があります。
しかし悪い部分ばかりではありません。留学生事務室が頼れない分、留学生同士で助け合う文化がありました。
私は私より半年前に来た日本人留学生に学生カードや銀行口座の作成、SIM購入など何から何まで手助けしてもらいました。私がお礼をしようとすると「自分も半年前に韓国人留学生たちに助けてもらった。その恩を新しく来た留学生に返しているだけ」と言ってくれました。困ったことがあればお互いに助け合う土壌があることが有り難かったです。
7.さいごに
以上が西安交通大学の紹介となります。最後に良い点・悪い点をまとめると、
良い点
・日本人留学生は少ないので、強制的に中国語を使う機会が多くなる
・さまざまな国から来た留学生と知り合える
・自分の力で難題に立ち向うサバイバル能力を身に付けられる
・日本語学科があるので日本語話者や日本人教員がいる
悪い点
・日本人が少ない
・留学生事務室のサポートは手厚くない
・留学生が主に利用する興慶キャンパスは施設が古い
となります。西安の大学に通いたいという強い意志があれば充実した留学生活が送れますが、そうでない場合は日本人が多い都市のサポート体制が充実した大学を選んだ方が良いかと思います。
長くなりましたがここまで読んでいただきありがとうございました。この記事が誰かのお
役に立てれば幸いです。(若林真央, 西安交通大学, 2024年)